はじめに

いじめ問題の責任は結局どこにあるのでしょうか?

責任の所在は大変難しいです。
まず、加害者に責任があるのは当然です。そして、学校にも責任があるでしょう。そこにとどまらず、いじめの防止・早期発見・対処について、国・地方公共団体・学校の設置者にも責任があることが法律で確認されています。
【条文】第5条(国の責務)
(国の責務)
第5条 国は、第三条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、いじめの防止等のための対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
【解説】第5条(国の責務)
国の責務

学校や教育委員会によるいじめの隠蔽等不適切な対応が問題になっているんだな。

あまりにもひどい対応には憤りを覚えますが、いじめ対応を学校だけにまかせてきた社会全体にも改善の余地があると言えます。そして、社会全体で責任を負っていく、その先頭に立つのが国であると規定しています。
この条文と第11条に従って、国のいじめ防止基本方針が策定されています。国のいじめ防止基本方針は大切です。11条の解説で関連して説明します。
【条文】第6条(地方公共団体の責務)
(地方公共団体の責務)
第6条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、いじめの防止等のための対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
【解説】第6条(地方公共団体の責務)
第6条の主体

”地方公共団体”という言葉が誰を指しているのか、主体について解説するんだな。
学校設置主体としての都道府県又は市町村(その教育委員会)だけを指すのではなく、首長(知事や市長など)やその補助機関も含む、地方公共団体全体を主体としています。
いじめの問題には地域性もあり得ることから、地域の状況に合わせた施策を実施することが求められています。この条文と第12条に従って、多くの地方公共団体で地方いじめ防止基本方針が定められています。
地方いじめ防止基本方針の具体例
・大津市 いじめ防止基本方針(概要版)
https://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/134/R2ijimekoudoukeikakugaiyouban.pdf
・大阪市 いじめ対策基本方針
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000515/515458/housinhonnbunn.pdf
大阪市 いじめ対策基本方針の特徴
・集団より、個人を優先

加害児童生徒との「仲直り」よりも被害児童生徒を「助ける」ことを優先するんだな。
・未確認でも被害者として扱う
・被害児童生徒及びその保護者は『知る権利』を有する
・隠ぺい対策徹底
・鎮静化を優先しない

混乱の鎮静化を優先すると、被害者やその保護者が混乱を大きくしていると噂されたり二次被害が出ることがあるんだな。
・「救済ルート」の一つとして「いじめSOS」を新設
・犯罪行為は警察に通報する
・加害児童生徒・保護者に対し、出席停止の措置(個別指導教室)
・第三者委員会からの調査結果及び意見具申は「公表」が原則
「集団づくりを至上の価値としがちな我が国の教育界」に一石を投ずる。
発生してしまったいじめの隠ぺいは、教育者以前に人間としての罪悪である。
「教育的配慮」の名の下に犯罪行為(触法行為を含む)の疑いのある事案についても教育の世界内部で解決しようとする(結果として加害児童生徒を庇う)ことの多かった学校教育・教育行政の姿からの決別、転換
大阪市いじめ対策基本方針より抜粋

これらの言葉には、いじめ対策に乗り出す大阪市の決意が感じられます。
もちろん、方針が進んでいても実際に対応する現場には、意識のグラデーションがあります。
【条文】第7条(学校の設置者の責務)
(学校の設置者の責務)
第7条 学校の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。
【解説】第7条(学校の設置者の責務)
学校の設置者
公立学校 → 教育委員会
私立学校 → 学校法人等
国立学校 → 国立大学法人
公立学校の場合、地方公共団体がまず1番目の主体ですが、学校の設置者は教育委員会と考えて問題ありません。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、学校の設置管理に関する事務は、教育委員会が行うこととされているためです。

一概には言えないが、私立の学校法人よりも、教育委員会の方が不登校支援やいじめ対策で進んでおり、対応もスムーズなんだな。