いじめに泣き寝入りしない!いじめ防止対策推進法(定義)第2条を解説~どんな行為がいじめにあたるか~

いじめ防止対策推進法解説2条 いじめ防止
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はじめに

お母さん
お母さん

うちの子がいやがらせを受けています。これっていじめにあたるのでしょうか?

郷原
郷原

2013年にできたいじめ防止対策推進法という法律で、いじめが定義されています。

簡単に言えば「被害者がいじめだと思えば、いじめ」です。

【条文】(定義)第2条

郷原
郷原

条文は、全部読まなくて大丈夫です。下の解説をご覧ください!

この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

2 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)をいう。

3 この法律において「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいう。

4 この法律において「保護者」とは、親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。

【解説】(定義)第2条

定義の変遷

いじめについての定義は、時代とともに変化しています。その変化をみることで、どのような行為がいじめと認定されずに見過ごされてきたのかわかります。それは、今のいじめの定義はどこまで含むのかを考える参考にもなります。

昭和61年いじめの定義

①自分より弱い者に対して一方的に、

②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、

③相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。

なお、起こった場所は学校の内外を問わない

はむた
はむた

「学校としてその事実を確認しているもの」ってことは、学校が確認していなければいじめではないってことなんだな。

郷原
郷原

さすが、はむた。着眼点がいいね。その点が変更されたのが平成6年の定義です。

平成6年いじめの定義

①自分より弱い者に対して一方的に、

②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、

③相手が深刻な苦痛を感じているもの。

なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。

なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことな
く、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

昭和61年の定義にあった「学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの」という条件が削除されています。また、 「いじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと」という項目が追加されています。

平成18年定義

当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。

郷原
郷原

弱い者に対して一方的に」「継続的に」「深刻な」といった文言がなくなりました。

はむた
はむた

つまり、いじめと認められる範囲が広くなったんだな。

平成25年定義(現在の定義)

児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。

お母さん
お母さん

大切そう…でも、わかりにくいです

郷原
郷原

法律の文言は、できるだけ正確に表現しようと心掛けているからわかりにくくなってしまいます。

誤解を恐れずかみ砕けば、次のように言えます。

「(知り合いの子から何かをされて)本人が嫌だと思ったもの」=「いじめ」

ですが、せっかくなので、もう少し細かく説明していきます。

心身の苦痛を感じているもの

上に引用した条文には、「心身の苦痛を感じているもの」と書いてありました。この文言から、本人が嫌だと思ったものがいじめだと私が書きましたが、もう少し説明させてください。

まずはっきりわかることは、いじめかどうかは本人の主観によって決められるということです。いじめの範囲をできるだけ広くとるのがこの法律の趣旨(ねらい)ですので、このような定義になっています。

はむた
はむた

とはいっても、すべてがいじめとして扱われるわけではないんだな。

学校や警察が組織的に動くには、いじめの認定が必要で、その認定は「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織(学校いじめ対策組織)」という各学校に設置されている組織が行うんだな。

郷原
郷原

昔は、一担任が「これはいじめじゃない」と勝手に判断することが多くありました。認定が、担任の先生などの個人ではなくチームでなされるのは一定の安心感があります。

学校いじめ対策組織については、22条の解説で詳しくお話します。

また、一般的にはいじめではなさそうな行為(じゃれあいや何気ない接触など)でも、本人が苦痛を感じていればいじめの定義に該当することになります。

さらに、本人が苦痛を感じていなかった場合や本人がいじめを否定した場合でも、客観的にいじめと認定するパターンも想定されています。その際には、行為の態様や周囲のの様子、本人の様子、身体上の痕跡などから判断されます。この考えから、インターネット上で本人が全く気付いていないいじめについても、いじめとして認定されることがあります。

はむた
はむた

いじめられていることを否定する子は、本当に多くいるんだな。

このように、いじめについてできるだけ広く認定するべきだという観点から法律が作られています。

一方で、小中学生・高校生であれば本当に好意から相手に不快な思いをさせてしまうこともあるものです。そのような場合に、いじめに対する厳格な措置とならないよう、国の基本方針には「学校は、行為を行った児童生徒に悪意はなかったことを十分加味したうえで対応する必要がある」とあります。

いじめに該当する可能性のある行為の例

国の基本方針には、以下のような例が挙げられています。

冷やかしやからかい,悪口や脅し文句,嫌なことを言われる

仲間はずれ,集団による無視をされる

軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする

ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする

金品をたかられる

金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする

嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする

パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる 等

郷原
郷原

次回は、基本理念・いじめの禁止について解説しますね。

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